カウンタークロックワイズ

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「……オレらって、何でこんな仲ええんやろ」 いきなり、ともやんがそんなことを言った。 「何でとかナイやろもう。ここまで来て」 仲良くなった後に聞かれても、そうなったからとしか言いようがない。 「たまに、実は生き別れた兄弟とかなんちゃうか思う」 「顔似てへん過ぎるやろ、二卵生か。どっちが兄キや」 「誕生日早いからオレかな。ともやとまなぶ」 「通信講座みたいやな」 ともやんからの返事は無かった。背中を向けていて、笑い声も聞こえない。 その背中を一度見て、天井に視線を戻す。 「竜一と竜二」 とだけ、言ってみた。 「……エドガーとマッシュ」 少し間があってから、返ってきた。 ともやんも、俺が何を狙っているのか分かっている。その事を確認し、俺はまた言う。 「バッシュとジャッジ」 「ダンとボビー……やったっけ」 ともやんもまた続けてきて、そこからは交互に、淡々と挙げるだけになる。 「崇雷と崇秀」 「王竜と王虎」 「孝昭と克昭」 「マリオとルイージ」 「トーマスとアーサー」 「アダムとイブ」 クイズの回答みたいに、共通点のある名前を、ひたすら挙げていく。それだけで理解できる。俺らの頭の中には、同じ知識が入っている。 「ユンヤン」 「あみまみ」 「まめつぶ」 「かつどん」 そこで、ともやんが吹き出した。短い笑い声に、いつからかずっと動いていなかった胸の奥の辺りが疼いた気がした。 「食いもんに変わっとぉやんけ」 向き直ったともやんは笑顔だった。俺は敢えて真面目な表情を作って説明する。 「ちゃうわ。あの、ほら、太鼓のやつあるやろ。赤と水色で、和太鼓に手生えとぉ……」 「えっ? 双子なん? そんな設定あんの?」 「らしいで。親は知らんけど」 そこで、またしてもともやんからのリアクションが無くなった。 初めから真剣な話がしたかったのだろう。俺も覚悟して肚を据える。 「……まあ実際、ホンマの兄弟より仲ええもんな」
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