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「前のテレビじゃみって放かしてもうてんなぁ……」
何とかしたかったが、換える前のテレビなら対応していたかどうかも記憶にない。
「いや、ええよ。しゃーないしゃーない」
ともやんはそう言いながらスマートフォンを手にしていた。
何やら操作をして、すぐに、
「あ、変換器はあるらしいで」
と言った。どんな製品があるのかを調べるのに慣れた速さだ。
昔から、ともやんは俺より機械に強い。挙動のおかしくなったコントローラーをドライバー一本で直した事もある。業者へ修理に出せばそれだけ日数も金もかかるので、そういう時のともやんは頼もしかった。
「なんぼ?」
聞くと、ともやんはスマートフォンから顔を上げず伝えてくる。
「ちょーど千円せんくらい」
「全然ちょうどちゃうがな」
思っていたよりは安かった。が、それを知ったとて、今すぐにどうにかできる問題ではない。
「でも、今すぐには届けへんねやろ」
「翌日配送あるで」
「翌日名古屋戻っとぉやん、井上さん」
確かにゲームは好きだし、一人でやっても懐かしさに浸る事はできるのだろう。
数年前から、復刻版が出始めたのも、情報としては知っている。
俺のようにレトロゲームを懐かしむ世代や、ともやんの言うネット動画で知った若者向けに開発されているのだ。
当時よりもっとコンパクトなハードで、もっと良い画質や音質で、楽しめるようになっているのだろう。
だが、俺はこれでなければならない気がした。この埃を被った本体で、そしてともやんと一緒にやれなければ、意味がないような気までした。
「名古屋ちゃうて。豊田や、吉池さん」
井上さん、もとい、ともやんは東京で何ヶ所か引っ越しをした後、東京以外にも転勤させられている。具体的にどの期間にどこにいたのか、本人ですらちゃんとは把握していない。
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