13人が本棚に入れています
本棚に追加
カウンタークロックワイズ
ともやんが泊まりに来た。
関西方面への出張の時はいつも、ホテルを取らずにウチに泊まりにくる。会社への届け出をどうしているのかは知らない。
ともやんとは、かれこれ二十五年の付き合いになる。小学生の頃からだから、幼馴染と言っていい。
三十路も半ばを過ぎ、これほど深くて長い付き合いの友達は、お互いに居ない。三十代と言えば、たいていは結婚して、友達より家族優先になる年代だからだ。
小中高と一緒だったが、高校を卒業した後、ともやんは大阪の大学へ行った。俺は地元の神戸で就職した。
大阪の狭い学生アパートに泊まりに行って、徹夜でゲームをする事もあった。初めて酒を飲んで、煙草を吸ったのもその時だ。
ともやんが神戸に帰省した時は、自分の実家より俺の家にいる時間の方が長くなった。
元々そういう付き合い方だったのだ。
小学生の時点で、ともやんが一度帰ってランドセルを置き、コントローラーとお菓子を持ってくる間に、俺がテレビとゲームハードを接続しておく流れが確立していたのだから。
当時は弟と相部屋だったが、年齢的にも力関係でも、子供部屋のテレビの権利は兄キの物と決まっていた。
塾やプール、習字なんかの無い日は毎日遊んだ。土曜日の昼はうちの家族と一緒に焼きそばを食べるのもお決まりだった。
俺もともやんも、テレビゲームが大好きだった。
野球やサッカーも、実際にやるより画面越しの方が楽しかった。ベスト16と言われるより6発売と言われる方がピンと来るし、アトランタと言われるより赤緑と言われる方が、いつの事か分かる。
アクション、アドベンチャー、ロールプレイング、格闘、レース、シューティング、パズル……何でもやった。
他の友達とソフトを持ち寄ったり、それぞれの家にわらわら集まったり、あの頃は無限に時間があったし、同い年の男子は全員友達だった。
最初のコメントを投稿しよう!