チェイス・ロボット

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「では、サヤタニ様。こちらの契約書にサインをお願いいたします」 これだけは何年経っても変わらない、書面での契約を交わすため、サインを求める。 ボールペンを握る彼女の華奢な指には、シルバーのメタリックなネイルが施されていた。 これはロボット化に肯定的な彼女たちの間で、最近流行っているらしい。 今月に入って、もう7人目だ。 いやはや、シルバー = ロボットというイメージは今もあるのか。 俺は契約書を受けとって、折れないようファイルに挟み、カバンにしまった。 そして、彼女のお見送りをするため、席を立つ。 「追いかけたい人がいるって、良いことですか?」 フロントまで案内する途中、つい尋ねてしまった。 普段はそんなことは絶対に聞かないが、今日はなんとなく。 ロボット化自体、決して安くはないし、失われる人間としての機能もある。 もちろん、まだ批判もある。 彼女は俺の問いに首を傾け、うーんと悩んだような素振りをみせる。 「どうなんでしょうね。この『追いかけ』が成功しても本質的に、追いついたかどうかは分からないですし」 「はい」 「でも、私がより満たされる未来が待ってそうなので。自己満ですね」 彼女はそう言って、朗らかに笑った。 「……良いですね」
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