Langsam!

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Langsam!

『ハロ、オーヴェ、もうすぐクリニックに着く』  デスクに置いたスマホから軽快な映画音楽が流れ出したが診察室の隣の小部屋にいて着信に気づかなかったウーヴェは、書類を片手に片手のステッキを頼りにデスクに戻ってようやく着信があったことに気づき、肩と頬でスマホを挟んで留守番メッセージを聞くが、もうすぐ着くとの言葉に二重窓の外へと目を向ける。  冬が近づく空は既にうす暗く日増しに重苦しい空気を垂れ込めていたが、この重苦しい空の下を電話の声と同じく浮かれた気持ちでこちらに向かっているリオンを想像し、自然と笑みを浮かべてしまう。  もうすぐ着くと言っていたがこの着信はいつだったのかとスマホの履歴を確認すると十分近く前で、ああ、もうすぐ来ると呟き書類をデスクの引き出しにしまい込む。  今日はクリニックの事務全般を担ってくれているリアも帰ったためウーヴェしかおらず、居心地の良い静けさに包まれていた。  それがもう間も無くやって来る男によって破られることへの抵抗感がなくなったのはいつからだろうかとぼんやりと思案しつつデスクの端に尻を乗せる。
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