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しかも5ユーロもと盛大に驚きの声を上げたリオンは、今はイングリッドと買い物に出かけていて不在のアリーセ・エリザベスの顔を脳裏に浮かべてその言葉を吐き出す光景を想像すると、問答無用で支払ってしまうと項垂れる。
「うん、払っていたなぁ。まあアリーセの照れた可愛い顔を見るための代償だと思えば安いものだったけどな」
ミカののろけにも聞こえる言葉にさすがに今度ばかりはウーヴェも驚き、他の三人と同じ表情になってしまう。
「エリーの照れた顔……?」
そんなものは数えるほども見たことがないと驚くウーヴェに鷹揚に頷いたミカは、それはそれは可愛いと顔の前で指先を重ねて穏やかに笑みを浮かべて何度も頷き、きっとリオンもそうじゃないのかと首を傾げると、リオンのまた伸びてきたくすんだ金髪が激しく左右に揺れる。
「ハニーと言っても照れてくれねぇし可愛い顔なんて見せてくれねぇ!」
「……いっそのこと50ユーロでも先払いをして50回言い続ければどうだ?」
懲りないリオンの様子に呆れたギュンター・ノルベルトが頬杖をつきチェスの駒を矯めつ眇めつしながら呟くと、ウーヴェの頭も上下する。
「……リーオ」
「んだよ」
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