Dear my friend./ぼくの、友達。

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Dear my friend./ぼくの、友達。

 秋が足早に過ぎ去ってしまったのか、急激に朝晩冷え込むようになった日の夕方、クリニックを再開しようやく以前のようなペースで診察が出来るようになったウーヴェは、今日の診察も無事に終えられた安堵の溜息を零し、二重窓の外へと目を向ける。  冬の寒さを視覚化しすでに暗くなっている空は今すぐにでも雪を降らせそうだったが、石畳の上を風に煽られて舞い上がりどこかへと飛んでいく落ち葉が我が身を翻弄する初冬の風の強さを教えてくれていた。  雪か雨が降る前に帰る事が出来ればと二重窓から室内へと顔を戻し、自然な流れでデスク横に立てかけてあるステッキへと目を向けたウーヴェは、雪が降ることで思い出される何かよりも物理的に足下が不安定になることへの危惧だけを覚え、何となく一つ溜息を零したときにドアが勢いよくノックされて驚きに身体が小さく跳ね上がる。  ノックと到底呼びたくはないそれを心のどこかでは懐かしく感じつつもそれを遙かに上回る呆れからどうぞと声を掛けると、季節を逆行したような熱を身に纏った男が満面の笑みを浮かべて入って来る。 「ハロ、マイダーリン。今日も仕事頑張ったかー?」
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