Dear my friend./ぼくの、友達。

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 陽気な声を上げて入って来たのは、己の仕事を終えて総てから解放された気分を身体全体で表現している己の伴侶であり永遠の恋人でもあるリオンだった。 「……もう一仕事したような疲れを感じたところだ」 「あー、何だよ、それ」  せっかく今朝の出勤以来ぶりに再会したのにどうしてそんな素直じゃない事を言うんだと、頬を膨らませつつ窓際のカウチで溜息を吐くウーヴェの後ろに回り込んだ後、痩躯を抱きしめて頬を白っぽい髪に押し当てる。  口では皮肉を言うウーヴェの本心がどこにあるのかをしっかりと見抜いているリオンは、程なくして溜息一つの後に手が髪を撫でてくれる事も見抜いていて、その通りに髪を撫でられて安堵の笑みを浮かべる。 「……お前はどうだった?」 「頑張ったぜ。今日の最後の仕事はボスのおやつを奪い取ることだったんだけどな、あまり好きなおやつじゃなかったから突き返してやった」 「……」  その光景をありありと想像出来たウーヴェの口から再度溜息が零れるが、いい加減にしないと雷が落ちるぞと己の過去の体験から忠告すると、雷は躱すのが楽しいのだ、人の楽しみを奪うなと返されて絶句する。
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