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その作業を痛みの中で何とか行ったウーヴェは額にびっしりと汗が浮いていることに気付き、腕でそれを拭うとその手がひどく柔らかなものに触れ、それが何であるかを確かめるために顔を向けると、そこには異様な大きさを誇る金色のテディベアがどっしりと座ってつぶらな瞳を向けていた。
その瞳に誘われるように手を伸ばして這いずるようにレオナルドと名付けられたテディベアの腿に上体を載せると、無意識に安堵の溜息が零れる。
焦げ茶色のテディベアが無いと眠れなかったのは幼い己だったが、あの頃から何の進歩もしていないのかと思わず自嘲したウーヴェは、今はテディベアが無くても眠れると脳内で反論の声が響いて確かにそうだと苦笑し今度はその巨体に寄りかかるために何とか起き上がる。
「ちゃんと……眠れる……」
誰に対する言い訳か分からないことを呟きつつもう一度ソファから立ち上がるが先程のような痛みは生まれずに胸を撫で下ろしたウーヴェは、ソファの背もたれや壁伝いにリビングから廊下に出、その先にあるベッドルームにステッキを頼りに時間を掛けて足を引きずり歩いて行く。
足を痛めるまでは何を思うことも無かったリビングからベッドへの移動が酷く重労働になってしまった今、ようやくたどり着けたベッドに潜り込むだけで精一杯だった為、パジャマに着替えることもせずに珍しくそのまま横になったウーヴェは、遠くから軽快な映画音楽が聞こえている気がしたが、確かめる気力が起きずにそのまま目を閉じてしまうのだった。
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