31人が本棚に入れています
本棚に追加
人を不幸にしたくせにお前は幸せになるのか、なれると思うのか。
その声が暗い世界に響いた瞬間、声にならない声を思わず上げたウーヴェは、これは夢だ、済んだことを夢に見ているだけで現実では無いとどこかから聞こえる声に縋るように手を伸ばすが、その手が空を掻き左足に激痛が走り、その反動で上体が跳ね上がる。
「……ッア!」
痛いという言葉すら口に出来ない痛みに一瞬で全身に汗が浮かび、痛みに呼吸を忘れて目を見張って身体を震わせつつ痛む足を抱え込む。
左足の傷は神経網をずたずたにし暑さや冷たさも感じられないようになっているのにどうして痛みだけは知覚するのだろうと、脳味噌の片隅が至極冷静に呟きを発する。
どうせ感覚の総てが無くなったのであれば痛みも感じなければ良いのに人体の不思議なのか痛みだけはいつまでも感じていたが、この痛みは足が感じているのでは無く脳が記憶している痛みだといつかどこかで聞いたとも思った時、激しく上下していた肩に暖かな何かが覆い被さったことに気付く。
最初のコメントを投稿しよう!