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あまり働かなさすぎてボケられては迷惑だからちょっとぐらい腹を立てさせた方が彼のためだと、誰が聞いても彼のためにはならないと思う事を呟きつつ傷口がくっきりと浮かんでいる左足の甲を撫でその手で脛を撫でたリオンは、呆気に取られたように見つめるウーヴェに片目を閉じる。
「……痛み、マシになったか?」
表情はおどけていても声音は真剣なもので、ウーヴェがその言葉に僅かに目を伏せると恐る恐る左足に力を入れる。
予想していた痛みが来なかったことに無意識に安堵の溜息を零したウーヴェにリオンも釣られるように溜息をつくと、そのまま伸び上がってウーヴェの口の端にキスをする。
「命の水、作ってくるから飲めよ」
「……うん。ダンケ、リーオ」
「どういたしましてー」
リオンが育ての母であるマザー・カタリーナから受け継いだ命の水と呼ぶ心身を暖める飲み物を用意するためにリオンがベッドから降り、その背中を見送ったウーヴェだったが、リオンがマグカップを片手に戻って来たのを見ると、己でも抑制できない感情が胸に苦痛を生み出し、シャツの胸元を握りしめる。
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