LOVE.

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 明日も仕事だから帰ると車の窓を開けて両親に挨拶をしたウーヴェは、運転席で同じ様に笑顔でミカと話しているリオンの様子が普段とまったく変わらないことに安堵し、両親に目で合図を送る。 「リオン、運転には気をつけるのよ」 「りょーかい」  アリーセ・エリザベスの言葉に素直に頷いたリオンはそろそろ出発すると告げて見送ってくれるレオポルドやイングリッドに笑顔で手を挙げ、階段の上から見送るギュンター・ノルベルトにも手を挙げる。 「しばらくここにいるつもりだからまたベルトランの店に行きましょう」 「ああ、そうしよう」  アリーセ・エリザベスのキスを頬に受けて返しミカにも同じ様に返したウーヴェは、じゃあ父さん母さんお休みと挨拶をし、シフトレバーに乗せられている手に手を重ねる。 「帰ろうか、リオン」 「ん、分かった」  ようやく陽が沈んだ夏の夜空の下、リオンがゆっくりとアクセルを踏み、開け放たれている門扉を潜って静かに車を走らせる。  門扉が閉まるまでその場で見送ってくれる家族の姿をミラーで確かめたウーヴェは、見えなくなった頃シートにもたれ掛かって溜息をつく。 「どうした?」 「……誰もお前の手が汚れているなんて言わなかっただろう?」 「あーえー……うん」  ここに来るまでの醜態を思い出したリオンがあーだのうーだのと意味のない言葉を発するが、うんと頷いた為、ウーヴェが再度シフトレバーの上の手に手を乗せる。
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