LOVE.

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 己の両親や家族を褒めるのは気恥ずかしいものがあるが、ちゃんとリオンの仕事を認めてくれる人達で良かったと素直に呟くと、リオンもそれに返す様に素直にうんと呟く。  自宅に帰り着くまでどちらもほとんど口を開かなかったが、ラジオから流れるピアノ曲が穏やかな気持ちにさせてくれ、重ねた手から伝わる温もりも心を温めてくれるものだった。  安全運転で帰り着いた自宅、そのドアを開けたウーヴェは、背後から抱きしめられてどうしたと小さく呟くが、うん、お前の家族は本当に優しい人達ばかりだ、こんな俺でもちゃんと受け入れるだけではなく愛してくれると囁かれ、返事の代わりにその腕をぽんと叩き今日はお前の部屋で寝ようと囁き返すのだった。  その後、イングリッドに催涙ガスを仕込んだ花束を手渡そうとしたスタッフは、以前バルツァーの関連会社へ就職希望だったものの採用試験に落ちてしまい仕方なくこの店で働くことになったが、食事会での集まりを知りついあんなことをしてしまったと警察に教えられ、当のイングリッドが興味を失った様子だった為に家族の間でもその話はそれきりになってしまい、家族が揃った時に時折思い出される過去の一ページに納められるのだった。
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