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キスをしよう 2024年キスの日
「オーヴェ、オーヴェ!」
リビングのソファで腹ばいになりながら雑誌を捲っていたウーヴェの耳に騒々しい足音と己を呼ぶ声が届き、気怠げに身体を起こすと、意外な近さにくすんだ金髪が見えて飛び退いてしまう。
「な、なんだ?」
「うん。今日ってキスの日なんだってさ。知ってたか?」
ウーヴェが飛び退いて出来た空間に正座するリオンの顔に浮かんでいるのが良からぬ事を思いついたときの笑みだったため、問われた言葉の意味を考える前に枕代わりにしていたクッションを抱え込んで眼鏡の下から青い目を覗き込む。
「いや、初めて聞いたな」
「へー。歩く百科事典って上のクリニックの双子に揶揄われてるオーヴェでも知らねぇんだ」
「歩く百科事典はアロイスのことだろう?」
「アロイスでもオーヴェでもどっちでも良いよ」
今俺が話題にしてるのは百科事典のことなどではなくキスの日という記念日のことだと、ウーヴェが抱え込んでいたクッションを奪い取ったかと思うと不満の声を無視しそれを背後に投げ捨てる。
「こら」
「こらじゃねぇ」
「……で、その俺が知らなかったキスの日がどうしたんだ?」
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