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早く本題に入れと苦笑しつつウーヴェが先を促すと、リオンの顔にそれはそれは見事な、大輪の花が満開に咲き誇っている姿を想像させる笑みが浮かび、長い付き合いの中で数え切れない程見てきたはずのその笑顔にウーヴェが無意識に息をのんでしまう。
「キスしよ、オーヴェ」
「……」
記念日に合わせてキスをしようと笑う永遠の恋人であり人生の伴走者でもあるリオンの相変わらずな突拍子もない言葉に面食らってしまうが、キスをすることを拒否することなどウーヴェには出来なかった。
ただそれを素直に認めると、この先何かと調子に乗る光景がありありと脳裏に浮かび、眼鏡のブリッジを押し上げながらどうしてと意地の悪い問いを投げかける。
その仕草が何を表しているのかをウーヴェは己の事ながら失念していて、リオンの口角が不気味な角度に持ち上がったのを見た瞬間、己の失態を悟る。
「キスはしないぞ!」
「えー、なぁんでそんなことを言うんだよー」
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