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「うん、そう。確かにあの光は梯子かもしれないけど、天国への門が開くときってもしかしてこんな真っ青な空の時じゃないのかなってふと思った」
だったら、今までマザーやゾフィーやお前を泣かせてきた俺でも天国に行けるんじゃないかと思ったと笑う顔は、視界の端に入り込んでいる空と似通った突き抜けたもののように感じ、頬に宛がわれている手に手を重ねてメガネの下で目を閉じる。
「今日みたいな日にさ、オーヴェに見守られながら天国に行くって最高じゃね?」
目を閉じているために暗い世界に響く声は達観した老人のもののようにも、まだまだこれから先己の人生で何があるのか分からないから楽しみだと、好奇心に満ちた若い青年のもののようにも聞こえ、薄く目を開けると、毎日見続けているためにその貴重さを危うく忘れてしまうところだった笑みを浮かべる顔が見える。
「俺が看取るのか?」
「そう! オーヴェに看取られて、まずは地獄に行くだろうから、そこでゾフィーと再会する」
「彼女は地獄にいるのか?」
「んー、マザーやアーベルが毎日毎晩祈ってるだろうけど、まだ地獄にいるんじゃねぇの?」
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