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「ゆっくりなんかしちゃだめだ。すぐに迎えに来るから待っててくれ」
己よりも先に死ぬなに始まり、ゆっくりすればいいと言った舌の根が乾かないうちにすぐに迎えに来ると言い張るリオンの相変わらずな言動の支離滅裂さに呆れ返ってテーブルで頬杖をついたウーヴェだったが、確かに今日のような雲一つない青空の中、煉獄を登ってくるリオンを出迎えるのも悪くないと気づき、ああ、どうすればいいんだと、婚約者がいる女性を好きになってしまった青年のように悩んでいると眉根を寄せる顔を見ていると、先ほどの言葉の衝撃が薄れていく気持ちになる。
突き抜けるような青天の下、いつか必ず別れが訪れるのならば確かに今日のような日が良いと自然とそう考えたウーヴェは、いつまでも考え込んでいるとここに皺が刻まれるぞと苦笑しつつリオンの寄せられた眉根を親指の腹で撫でると、それが魔法か何かのように眉が開いて青い目が笑みの形に変化する。
「もしも出来るのなら同じ日に同じ場所で死ぬことができれば良いな」
「うん、それが最高だな」
でもそれはきっと恐ろしく低い確率だろうから、やはりオーヴェは俺を送らなければならないんだと胸を張られてしまい、それ以上何も言い返す気力が無くなってしまう。
「だから約束、オーヴェ」
約束との言葉に一瞬鼓動を跳ね上げたウーヴェは、お前が満足したら神様に止められても必ず迎えに来るからと笑う顔に一つ頷き、了承の証にもう一度頬を撫でて額にキスをする。
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