蒼穹

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「きっと今どこかで天国の扉が開いているぜ」 「……そうだな、今日のような日ならばそれもあるかもしれないな」  これ以上この話題を続けるつもりはなかったためにそっとそう呟いたウーヴェは、立ち上がったリオンの手を借りて同じように立ち上がり、マウリッツ直伝の料理を教えてくれと笑うリオンの腰に腕を回し、二人同じ速さでキッチンに向かうと、宣言通りに真っ先にウーヴェが冷蔵庫から取り出したビールを開け、もう何も言いませんと言いたげな顔のリオンの頬によき理解者で嬉しいと感謝のキスをし、友人から教わった料理を作るための材料をパントリーや冷蔵庫から出すように指示をするのだった。  広いキッチンでランチの準備を行う二人だったが、目が痛みを覚えそうな蒼穹が窓枠の中でまるで絵画のように納まっている事に気付かないほどキッチンに賑やかな声を響かせるのだった。
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