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お気に入りのチェアに腰を下ろし、二重窓の外に広がる蒼穹へと目を向けたのは、今日の診察を終えて疲労感を少し滲ませた溜息を吐いたウーヴェだった。
そんな彼のために今日も支えになってくれたリアが、ゆっくりとした所作でハーブティーの用意を行い、ああ、ありがとうと笑みを浮かべる。
「診察を少しセーブして楽になったかしら」
「そうだな、楽になったな」
寄る年波には勝てないと肩を竦めつつ彼女が用意をしてくれるお茶とビスケットで疲れを癒していると、自然と二人の視線がドアに向けられる。
以前とは違って静かなティータイムを取れるようになってからの日数など数えてないが、今日も静かだなと笑ってカップに口を付けたとき、思わず飛び上がってしまいそうな激しい音が部屋中に響き、リアの手からビスケットが落ちてしまう。
「……本当に、いつまで経っても直らないわね」
「そうだな」
でもきっとアレがないと静かすぎて寂しさを覚えるんだろうと、今もそれを覚えていることを教えるような顔で呟いたウーヴェは、リアが立ち上がろうとするのを制し、今日はもう閉めるからお疲れさまと労いの言葉を掛ける。
「あなたも、お疲れさまでした」
「ああ。……気をつけて帰ってくれ、リア」
ありがとうと礼を言い、部屋を出ていく彼女の小さく丸くなった背中を見送ったウーヴェだったが、さてと呟いた後にもう一度激しい音を立てるドアへと顔を向け、嘆息交じりにどうぞと告げる。
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