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 追い抜いていく」   ドアが閉まり、動き出す電車。 ○ 奥村家・玄関(夜)   灯りが消えている。   鍵を開ける音がして、引き戸を開け義則   が入って来る。手にはスーパーの買い物   袋。   靴を脱いで上がり、灯りをつける義則。 義則「父さーん。寝たんか?」   気配が無い。   義則、怪訝な顔で奥へ入っていく。 ○ 同・座敷(夜)   そこだけ明るい部屋の中、大きな本棚の   横でパジャマ姿の奥村義一(73)が腰を   下ろし、古い本を開いている。   やってくる義則。 義則「何やってんの」   気づき、顔を上げる義一。 義一「おぉ、お帰り」 義則「具合どうや?起きててええのか?」   義則、義一の傍らに腰を下ろす。 義一「なんか、寝られんでな」 義則「…何読んでんの」   義一、頷いて本の表紙を見せる。   旧い万葉集の研究書。 義則「母さんの学生の時のかな」
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