3人が本棚に入れています
本棚に追加
追い抜いていく」
ドアが閉まり、動き出す電車。
○ 奥村家・玄関(夜)
灯りが消えている。
鍵を開ける音がして、引き戸を開け義則
が入って来る。手にはスーパーの買い物
袋。
靴を脱いで上がり、灯りをつける義則。
義則「父さーん。寝たんか?」
気配が無い。
義則、怪訝な顔で奥へ入っていく。
○ 同・座敷(夜)
そこだけ明るい部屋の中、大きな本棚の
横でパジャマ姿の奥村義一(73)が腰を
下ろし、古い本を開いている。
やってくる義則。
義則「何やってんの」
気づき、顔を上げる義一。
義一「おぉ、お帰り」
義則「具合どうや?起きててええのか?」
義則、義一の傍らに腰を下ろす。
義一「なんか、寝られんでな」
義則「…何読んでんの」
義一、頷いて本の表紙を見せる。
旧い万葉集の研究書。
義則「母さんの学生の時のかな」
最初のコメントを投稿しよう!