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るんですけど、なんかね。うまく行かなく
て、喧嘩ばっかり」
義則「そうなんや」
由梨「したはるんですか?」
義則「え?」
由梨「結婚」
義則「してた、やな」
由梨「あ…ごめんなさい」
義則、笑って首を振ると時計を指差し、
義則「遅刻しますよ」
由梨「(時計を見)ほんまや、すみません」
駆け出す由梨。振り向いて、
由梨「今度、相談乗ってください」
手を軽くあげて応じる義則。
笑顔はすっと消えた。
○ 吉野線・壺阪山駅(夕)
停車している電車。
座席に義則が座っている。
隣を通過していく特急電車。
義則(N)「失くしたものは、戻ってこない。
二度と同じ線の上を、走ることはない。今
彼女は、どこで何をしているのだろうか」
動き出す電車。
○ 奥村家・座敷(夜)
本棚の横で、義則が万葉集の研究書を開
いている。
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