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秋の選手権が始まった。
僕は夏の間、ひたすら走る練習を積んできた。
知念に言われてから、僕は助走フォームを安定させるべく短距離メンバーと練習を積んできた。その成果を見せるときが来た。
走幅跳の選手招集所に行くと、他校の生徒も多くいた。
兵藤の姿も見えた。相変わらずでかく目立っている。
この夏、兵藤は一年生にしてインターハイ出場も果たしていた。間違いなく県内の一年生でNo.1の選手だ。
兵藤に追いつけば、僕も自信は持てるはずだ、そんなことを思いながら兵藤の後ろ姿を見ていると、ふいに兵藤が振り向き、僕と目が合った。
少し気まずかったが、ここで引いていてはダメだ、そう思った僕はにやりと笑ってみせた。
彼はツンツンした頭を触りながら、
「誰だっけ?」
と首を傾げて、僕には興味なさげに近くへやってきた知り合いらしき男と話し始めた。
かたやインハイ出場者、かたや記録なし。いまは仕方ない。
まずは僕自身がNMから抜け出さないと、挑戦も始まらない。
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