3/3
前へ
/14ページ
次へ
*  こうして入部することになった青城南高校の陸上部は、厳しい顧問や口うるさく言ってくる先輩もおらず、和やかな部活だった。  同級生の男子は僕以外に五人いたが、三人が短距離専攻、二人が長距離専攻だった。  先輩だけでなく、同級生にも走幅跳を専攻している仲間はいなかった。  ということは、この陸上部で走幅跳を専攻しているのは自分だけということになる。よく言えば自由に何でも練習できるということになるが、逆に僕が行き詰っても誰も教えてくれないという環境だった。  走幅跳は跳ぶ種目とはいえ、短距離の要素はあるから短距離チームと一緒に練習する部分もある。走る練習だってする。  しかし、実際に跳ぶための練習となると、僕は短距離チームを離れ、グラウンドの隅っこに砂を慣らすためのトンボを一人きりで持っていくことになるのだった。  中学三年の引退以降、まともに跳んだことがなかった僕は、専門練習すると言っても、 「こんな感じだったかな?」  と手探りのまま練習を続けた。  中学で岡野先輩と一緒にやった練習以外の方法を僕はわからず、なんとなく中学時代の記録は超えるぐらいは跳べそうという感覚は戻ってきた。  そして、6月、高校総体予選が始まった。  ほかに走幅跳を専攻する部員がいないので、100mのように部内での対抗もなく、僕は一年生ながら高校総体予選に出場することになった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加