困惑

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「ねえねえ、名前は?」わたしの問いかけに、反応はない。こちらも見ない。 「雪音ちゃん、誰と話してるの?」 その時のわたしには、素直に答えること以外出来なかった。「この子だよ」また指を差すが、未来ちゃんの反応は同じだ。 「変なの。誰もいないのに」 「いるよ。雪音の足にぶら下がってる」 さすがの未来ちゃんも怖くなったのか、顔が少し強張った。「・・・未来、帰るね」未来ちゃんがジャングルジムから降りようとする。 「あっ、待って!雪音も帰る!」わたしが足を動かすと、その子はわたしを掴む手にギュッと力を入れた。「離して!」引き剥がそうと手を伸ばした瞬間、その子はわたしを見た。目が赤く光る。そして次の瞬間、わたしの足からジャンプした。 「キャッ!!」叫んだのは、未来ちゃんだ。 その子は、未来ちゃんの背中に飛び移ったのだ。「えっ!なに!?」 未来ちゃんの首にぶら下がり、ケラケラ笑いながら、足をジタバタさせている。── 落とそうとしているんだ。 未来ちゃんは後ろの違和感を拭おうと、鉄パイプを掴んでいた両手を離した。 そこからは、スローモーションのように見えた。 背中から、落ちていく未来ちゃん。 わたしは手を伸ばし、未来ちゃんの手を掴もうとする。 手が触れそうになり、よし!掴・・・・・ 鈍いと音と共に、響き渡る悲鳴。 握り締めたわたしの手には、何も無い。 しばらく、動けなかった。仰向けに横たわる未来ちゃんを、見下ろすわたし。 笑い声で、我に返った。その子は、未来ちゃんの頭の上から、わたしの反応を楽しむかのようにケラケラと笑っている。 一気に、怒りが込み上げてきた。ジャンプして飛び降りる。わたしが未来ちゃんに駆け寄ると、その子は走って林のほうへ逃げていった。 笑いながら。 追いかけようとしてグッと留まる。 未来ちゃん。 「未来ちゃん!大丈夫!?」未来ちゃんは後頭部を押さえながら、泣き叫んでいる。「頭が痛いの!?」ソッと頭に触れると、違和感を感じた。 「あっ・・・あっ・・・」手の平が赤く染まっている。 どうしよう。どうしよう。どうしよう。 ─── 誰か・・・。
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