わたしの代わり

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「それで、アンタの話はいつ始まるの?もう少し飲んでからのほうがいい?」 「うん」即答した。 2杯目のビールが届き、それに手をつける前に春香がおかわりを注文した。ウイスキーロックを2つ。 「一応聞くけど、ロック2つってわたしの?」 「は?なんで?あたしのよ」 「珍しいね。普段あんまり飲まないじゃん」飲みたいけど、早く酔いすぎて損してるという理由で。 「あたしもシラフよりはいいでしょ」 ──今、わかった。態度や口調はいつも通りだけど、春香も少なからず緊張しているんだ。 「さっき、何聞いても驚かないって言ったけど・・・どっちかと言うと、信じない。のほうかも」 「アンタが言うことを、あたしが信じないってこと?」 「うん」 「ちなみに、その話って今まで誰かにしたことある?」 「え?」 「これから言おうとしてる事、今まで何人に話した?」 そんな質問が来るとは思わず、わたしはその言葉をストレートに受け取った。 「小さい時に、母さんに・・・かな」 「小さい時?」 「うん」 「母親にだけ?」 「うん、まあ・・・」早坂さん達には自分から申告したわけではないし、数には入らないよね。 「どんな反応だった?」 ──これは、どういう事だ?春香は何を思って聞いてくるんだろう。何か探りを入れてるんだろうか。 「信じて、くれなかった」 「・・・なるほど」 「えっ、何がなるほど?」 春香は答える代わりにビールを口に運んだ。今度は"控えめ"に半分まで。わたしも負けじと後を追いかける。 2杯目を半分程飲んだところで、ほろっと酔いが回ってきた。今日は緊張のせいで何も喉を通らず、それが酔いを加速させたんだろう。今日に限っては助かる。 「あたしさ、ある仮説を立ててるんだけど」春香がおもむろに言い出した。 「仮説?ん?わたしの事でってこと?」 「うん」 「・・・なに?」 「馬鹿馬鹿しいと自分でも思うのよ。でもアンタ、信じるかの問題って言ったじゃない?それを踏まえて、今までのアンタを見てきた上での仮説、よ」 「ずいぶんな前置きだな。それで、なに?」 一体、春香の口から何が飛び出すんだろう。想像もつかない。 春香は鋭い目でわたしを見つめた。まるで、わかっているぞとでも言うように。
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