わたしの代わり

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「高級ステーキと激安ステーキよ!?誰だって高級なほう食べたいじゃない!」 「待って、話がわかんなくなってきた・・・」 「まあ、そーゆうことよ」 「いや待て!全然わかんないしまとまってない!」 「アンタは、人の意見を優先することに慣れすぎてんのよ。逆に言えば、自分の感情を殺してる」 ──今まで、自分の事をそんなふうに思った事はない。だから、反論出来るはずなのに、まっすぐ見てくる春香の目を直視することが出来ない。 「目泳いでるわよ」 「ノー!」 「・・・アンタ日本人じゃなかったっけ」 これまでは脳内独り言で済んでいたのに、実際に口に出るようになったか。──早坂さんめ。 「てゆーか、ポテトの話から脱線しすぎでは?」 「そーね、なんでこんな話になったんだっけ?」 「飴とステーキの話からだ!」 「あー、そうね」 春香の目がトロンとしている。意外と酔いが回っているみたいだ。次の日覚えていないパターンだけは避けねば。 「それで、その仮説って?」 「あー、うん」そしてウイスキーを口に運ぶ。その一口は、ロックではなく水割りの飲み方だ。 「あんま酔わないでよ・・・」 「わーかってるわよ。これくらいじゃ記憶無くしません」 「じゃあ、続きをお願いします」 「・・・うん。あたしが思うにね、アンタは・・・」そこからが、長かった。よほど言いづらい事なのか、春香はまたウイスキーを口に入れる。「アンタはねぇ・・・・・・霊が見える!」 ──その時の、自分の感情はなんと言っていいかわからない。驚き──いや、それもそうだが、それより"嬉しさ"のほうが勝(まさ)っていた。 「今、なんて?」 「霊よ、幽霊!お化け!見えるんでしょ!」 春香の指がビシッとわたしに向かう。 どこまで、本気で言っているのか──表情を探るが、わからない。 「なんで?」 「前々から変だとは思ってたけど、子供の頃に母親に話して信じてくれなかったって聞いて確信したわ。当たりでしょ?」 春香に冗談を言っている様子は感じられないが、わからない。 「それ、どこまで本気で言ってる?」 「んー・・・半分」 「・・・半分か」 「それで、どーなのよ」 「・・・ちなみにさ、前々から変だと思ってたって、どゆこと?」
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