わたしの代わり

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「あー・・・聞く気ある?怖いって思うかも」 「むしろ聞く気しかない。どーせあたしには見えないし。アンタが生まれてから今に至るまで起こった事、全部言ってみて。出来れば10分以内にまとめて」 「無理だ!聞く気ないし!」 それから、春香の言う通りわたしはこれまで自分に起こった全ての事を話した。 最初に見た小さな猫耳の妖怪、それを母さんに伝えた時のこと。 それを機に、見て見ぬフリをして生きてきたこと。 早坂さん達と出逢った経緯。その後、わたしの身に起こった全ての事を。 春香は興味津々に聞いていた。まるで、おとぎ話を聞いている子供のように。 改めて、只者ではないと思った。なんの確証もない話を、わたしが言ったからという理由だけで受け入れ、すでに順応しているんだから。 わたしが春香だったら、同じように出来ただろうか。春香の言う事を信じ切れただろうか。 拒絶される事を恐れてばかりいる自分は、何て小さいんだろうと思った。 あっという間に、時間が過ぎた。かれこれ4時間は話し続けていた。ラストオーダーを聞かれたタイミングでお開きとなった。 話に夢中になっていたせいか酒もそこまで進まず、店を出た時は2人ともほろ酔い程度だった。 店側としたら、迷惑な客でしかない。同じ飲食店に勤める者としてタブーを犯してしまったが、今日だけは大目に見てくれ、と心の中で謝罪をした。 酒で火照った身体に、冷たい空気が心地良い。わたしと春香は夜風に当たりながらコンビニへと向かった。 「あー、風が気持ちぃ〜」 「今は酔ってるからね。そろそろコート無しじゃ歩けなくなるよ」 「いーじゃん、あたし寒いのは嫌いじゃないわ」 「えー、そお?わたしは嫌だな。寒いより暑いほうがいい」 「寒けりゃ着込めばいいだけじゃない。夏はエアコン効いた所以外、死ぬ」 そういえば、瀬野さんも同じような事を言っていたな。現実主義なところも似ているし、この2人、案外気が合いそうだ。 「今度、ゆっくり2人に会わせるね」 「2人?早坂さんと瀬野さん?」 「うん」 「別にいーわよ」 「えっ」 「どんな関係か知らなかったからイロイロ心配してたけど。アンタ天然記念物だし。もう状況もわかったから。あの2人、信用出来るんでしょ?」 「うん。そこは断言する」 「だったらいいわ。そこさえわかれば」
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