突撃、お宅訪問?

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「それは今だから言えることでしょ。元々存在さえ知らなければ、思うこともないわ」 「そうなんですけどぉっ・・・みんな空舞さんみたいに良い妖怪だったらいいのに」 「残念ながら、そんな事はあり得ないわ。人間の世界だってそうでしょう、善人もいれば悪人も存在する。どちらかと言うと悪のほうが濃いわね」 「そうですね・・・世の中、良い人ばかりじゃないですけど」 「まあ、悪人とは関わらなければいいだけよ」 「・・・悪い妖怪とも関わりたくない」 「ならそうすれば?妖怪が見えない人間が傷ついても放っておけばいいのよ」 「・・・なんか空舞さんイジワルだっ」 「そう?グジグジ言うくらいなら、関わるのをやめたほうがいいと思うけど」 下唇が前に突き出る。 「まあ、あなたはよくやってると思うわ。じゃあわたしはこれで」 「えっ、帰るんですか?」 「これからまた同じような映画を観るんでしょ?寝ているほうがいいわ」 そう、今日のリストは恋愛映画を2本と、海外ドラマを寝落ちするまで、だ。 「明日休みだからといって夜更かしすると、その分アルコールも増えるわよ。冷蔵庫にワインも半分残っていたしね」 ギクリとした。いつの間に見たんだ?最近、この器用なクチバシを恨めしく思うことがある。 「大丈夫です。もうけっこう眠いのでそんなにもたないかと」 「この前のようにソファーでお腹丸出しで寝ていると風邪引くわよ。それじゃあ、おやすみ」 「おやすみなさい」 空舞さんはいつものように恨めしいクチバシで窓を開閉してベランダから飛び去って行った。 そうだ、気をつけなければ。この前のように、思い切りヘソを突かれて飛び起きるのは二度とゴメンだ。 その後突入した2本目の映画は、30分ほどで挫折した。睡魔に負けたわけではない、序盤からあまりにもハイスペックな男子が登場したからだ。片やヒロインは極一般的な家庭に育ち、何の取り柄もないが性格の良いただの"美女"。いわゆる、身分差を題としたありきたりな恋愛映画だ。 海外ドラマに切り替えてからは、あっという間に時が過ぎた。キリが良い所で止めようと思いつつ、なかなかその場面に行き当たらない。 4話目の序盤では、主人公のマシューが潜入先のテロリストの隠れ家で腹を刺されたのである。
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