30人が本棚に入れています
本棚に追加
「豪快だね、おばあちゃん・・・どう?美味しい?」
「味がしねぇ!」そう言い、おばあちゃんは壺の中の唐辛子をポリポリと食べ始めた。
見ているだけで、唾液がたまる。
「あーん」
早坂さんに催促され、ゼリーをまた口に運ぶ。1つ食べ終えるのも辛そうだったが、何とか完食は出来た。
「次は栄養ドリンクです」
「ずいぶんいっぱいあるのね」
「冷蔵庫にもあるので、あとで飲んでくださいね」
「口移しで飲ませてくれないの?」
「風邪も移りますが」
「ああ、そうね。いただくわ」
──こういうのも、最近は受け流せるようになってきたが、それと同時に本当にやってやろうかとも思うようになってきた。この"軽口"の裏にある"真実"を引き出したい。
「・・・睨まれてる?」
「いいえ。薬は最後、いつ飲みました?」
早坂さんは考えた。脳内で時を遡っている。
「昨日の夜ね」
「ちなみに、なんの薬ですか?見当たらないけど」
「咳止め?それしか無かったのよ」
「・・・咳はしてませんがね。まあいいです。買ってきたので、飲んでください」
「あい、ありがとう」
この素直さは可愛いが、やってることには腹が立つ。もう少し、自分の事を真剣に考えてほしいものだ。
薬を飲んだ早坂さんは目を閉じ、──ニヤニヤしていた。
「何笑いですか?」
「いえね、定期的に風邪引きたいなと思って」
「・・・なぜに?」
「あなたがこうやって、側にいてくれるんだもの」
「・・・わたしは気が気じゃないです」
「ふふ、これからも風邪引くように頑張るわ」
「風邪引かないように気をつけるの間違いですが!」
早坂さんがうっすら目を開け、わたしを見た。
そして、手が差し伸べられる。わたしはその手を当然のように握った。
「ありがとう、雪音ちゃん。あなたがいてくれて本当に良かったわ」
「・・・・・・死に際のセリフみたいに聞こえるんでヤメテもらえますか」
早坂さんはブッと噴き出した。
「まあ、このまま死ねるなら、それも悪くないわね」
「もう、ヤメテくださいって!いいから寝てください!」
「あはは、わかったわ。このままでもいい?」
ダメとは言えないくらい、強く握られている。
「はい」
「・・・ありがとう」
最初のコメントを投稿しよう!