突撃、お宅訪問?

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早坂さんのシャツをギュッと握った。けれど、早坂さんは微動だにしない。 少しだけ早坂さんに身を寄せると、ベッドがギシッと音を立てた。 「今言ったの聞こえてた?」 「聞・・・こえてません」 一瞬。一瞬だった。一瞬で、わたしは早坂さんに両手首を押さえつけられていた。 早坂さんの重みが身体にのしかかる。でも、重くはない。わたしに負荷がかからないように自分の体重を支えている。それでも、わたしを掴む手は力強い。 早坂さんのこんな顔は初めて見た。射るようにわたしを見る。いつもの優しさは微塵もない。怖い。でも、その目から逃れる事が出来ない。 「早坂さん・・・」 「あたしは警告したわよ」 早坂さんは、わたしの顔を挟むように両肘をついた。もはや身動き出来ないのに、逃さないというようにわたしの頭を押さえつける。 早坂さんの口が少しだけ開き、わたしの元へ下りてくる。 なんでこんなに落ち着いているのか、自分でも不思議だった。 そして、その唇がわたしの唇に触れ──る寸前で早坂さんは止まった。目を閉じ、ふうと息を吐く。 「美麗ちゃん・・・」 「え"っ」 「なんだ、接吻しねーのが?」 横を見ると、おばあちゃんの顔がベッドに乗っていた。 「ギャ───ッ!!」 わたしが飛び起きると同時に早坂さんは離れ、そのままベッドに仰向けに寝転んだ。 「おっ!おばあちゃん!いつからそこに!?」 「全然起ぎでこねーがら心配して来たら、接吻してっからよ!わけーのはいいなぁ!ガッハッハッ」 「してません!」 「ある意味助かったわ」ボソッと呟いた早坂さんは腕で顔を覆っている。ある意味って、なに? 「てててっ、ていうかっ、今何時ですきゃ!?」    平静を装うスキルはわたしには備わっていない。 「5時過ぎだっ!」 「ええ!?もうそんな時間!?」 「けっこう寝たわねぇ。そりゃ体調も良くなるはずだわ」 勢いでごまかすわたしが滑稽に見えるほど、早坂さんは冷静だ。 テーブルの体温計を早坂さんに渡した。 「もう下がってるわよ」 「測ってください」 素直に体温計を脇に挟んだ早坂さんは、わたしの手で遊び始めた。指1本1本をマッサージするように触る。 すっかり、通常モードだ。それが悲しいような助かるような。複雑だが、わたしも出来るだけさっきの事は考えないようにする。 「ほら、36.8℃よ」 「薬が効いてるだけかもしれないので、油断は禁物ですね」 「凄いわね、こんなに効くとは思わなかったわ。昨日は飲んでも下がらなかったのに」 「咳止めですからね・・・症状に合った薬を飲みましょう」
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