黎明

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午前8時30分 ─。 いつもより早く起きたわたしは清々しい気持ちでカーテンを開けたが、空はどんよりと灰色の雲に覆われていた。 昨日まで晴天が続いていたのに、決意した日に限ってこんな天気とは。まあ、決意といってもランニング程度の話だが。 最近は鬼火の怪我から始まり、泳斗くんや春香の事もあって心身共に疲れていた。だから走る気になれなかった。そうやって自分への言い訳はしっかり成立していたのに、──空舞さんめ。 "あなた、最近走らないわね。怪我も治っているのになぜ?それに最近顔が丸くなってきたわよ?お酒ばかり飲んで運動しないからじゃない?" 昨日の言葉を思い出し、昨日に続いてダメージを喰らった。 いや、仰る通りで──ここ最近はお酒ばかり飲んでろくに運動もしていなかった。運動と言えるのは通勤とスーパーへの買い出しくらいで、夏と違って汗もかかないから消費するものが何もない。 鏡を見て自分の顔を確認する。 うむ、若干、頬に肉がついたか?まあしかし、これくらいは許容範囲だ。すぐに落とす自信はある。 見てろよ空舞さん。わたしが本気を出せば、1日・・・いや、2日で元通りだ。 午前9時15分 ─。 わたしは、人間の体力の衰えというものを、これ以上ないほど実感していた。 何故だ──まだ15分しか走っていないのに、何故わたしはこんなに疲れ果てているんだ。 ランニングをサボったといっても、たかが2週間程度。それだけで人間はこんなにも衰えるものなのか? もしかすると、自分が思うより体重が増えているのかもしれない。そのせいで身体が重いのかも。もしくは、ただの加齢による筋力低下? いやいや、わたしはまだ20代前半だ。そんなことは、ありえない。 自問自答しながら、ふと思い出した。 そういえばわたし、もうすぐ誕生日じゃん。20代前半って言えなくなるじゃん。 もしかしたら、本当に年齢による体力低下なのかもしれない。 モチベーションが下がると共に、走る速度も落ちた。 しかし、立ち直りが早いのもわたしだ。頬を叩いて気合いを注入する。あとは自分との勝負。雑念を追い払い、速度を上げた。
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