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午前5時 ─。
───痛い。
このおでこに刺さる鋭い痛みは、嫌と言うほど経験している。
わかった。わかりました。起きますから、もうヤメテくれ空舞さん。
──・・・ん?空舞さん?
見事に目が覚めた。
目の前には、黒いクチバシ。
「起きなさい、朝よ」
「・・・空舞さん?」
「遊里が迎えに来るんでしょう」
携帯を確認する。「って、まだ5時じゃないですか。わたしさっき寝たばっかなんですけど・・・」
「あれからずいぶん飲んだようね」
誤魔化しようのない証拠がテーブルにある。わたしはのそのそと身体を起こした。
「なんか寝つけなくて・・・ていうか空舞さんなんで?もう戻ってこないかと思った・・・」
空舞さんはヘッドボードからわたしの膝へ移動した。
「ごめんなさい。わたしは自分の事しか考えていなかったわ。1番辛いのはアナタなのに・・・ごめんなさい」
「空舞さん・・・いえ、謝らないでください。わたしこそ、唐突すぎましたよね・・・ごめんなさい。でも、よかった。あのまま別れるのは悲しすぎます」
空舞さんはわたしの肩へ来ると、クチバシで頬に擦り寄った。
「別れじゃないでしょ。アナタは死なないんだから」
鼻の奥がツーンとなり、涙が込み上げてきた。でも、わたしは泣かない。
「そうですよ。わたしは死にません。だからまた会えますね」
「ここで、待ってるわ。アナタが帰ってくるのを。何があっても、帰ってきなさい」
「うぅ・・・空舞さんっ」
抱きしめようとしたが、すんなり逃げられた。
「早くシャワーを浴びてきたら?髪が蜘蛛の巣みたいになっているわよ」
──いつものテンションに戻るの早いな。でも、それが安心する。
「行ってきまっす」
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