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「ここで飲むんですか?」
「あちらに布団を用意していますので、雪音さんにはこれを飲んだ後、横になってもらいます」
「・・・あの、どれくらいでわかるんですか?その、結果というか」──死ぬか、生きるか。
「祖母の場合は、半日ほどかかったといいます。その、非常に申し上げにくいのですが・・・その間、ずっと苦しみが続いていたと」
「なるほど・・・」飲んですぐ治るってわけにはいかないか。苦しみって、どんなだろう。
「しかし個人差があるようで、数時間でアザが消えた方もいたようです」
「数時間で死ぬこともあるってことですね」
「・・・はい」
「わかりました。わたしはいつでも・・・」
「雪音ちゃん、喉乾いてない?」 唐突に言ったのは、早坂さんだ。
「のど・・・?」
「うん、水分補給してからのほうがいいんじゃない」
そう言われると水分を欲する単純なわたしだ。
「あ、じゃあ・・・」
「おいで」
早坂さんが立ち上がり、わたしも後に続く。
部屋を出て台所へ案内された。初めて来たが、全体的に古い作りだ。この家自体、築年数も相当だろうから不思議ではないが。
「冷蔵庫に水があるわ」
「あ、はい」
どうやら冷蔵庫は最新式のようだ。中にはペットボトルの水とお茶、作り置きと思われるタッパーがいくつか重なっている。雪人さんが作っているんだろうか。
「早坂さんも飲みま・・・」
驚いて、ペットボトルを落としてしまった。振り向いたすぐそこに、早坂さんがいたから。
「びっくりし・・・」 一瞬、何が起きたかわからなかった。気づけば、わたしの唇は塞がれていた。早坂さんの唇によって。
冷蔵庫がパタンと閉まり、早坂さんの身体がわたしの身体を押し付ける。
早坂さんはわたしの顔を両手で挟み、さらに強く口づけた。
──息が出来ない。呼吸をする隙間を与えてくれない。
苦しくて早坂さんの服を握るが、早坂さんはやめようとしない。角度を変えて何度も押しつけられる唇に身体の自由を奪われていく。
とても、長く感じた。早坂さんは最後にわたしの下唇をペロッと舐めると、やっと解放してくれた。
膝から崩れ落ちそうになり、早坂さんにしがみついた。そのまま強く抱き寄せられる。
「なん・・・で・・・」 そう言うのがやっとだった。呼吸がままならない。
「文句は起きてから聞くわ」 耳元で囁かれた息が熱い。
───ずるい。なんで、今このタイミングでこんな事。わたしには言わせてくれないくせに。ありとあらゆる感情が溢れ出し、涙が込み上げてきた。
早坂さんはわたしを更に強く抱きしめた。苦しくて、また呼吸を奪われる。
「大丈夫。待ってるから。安心して戻ってきなさい」
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