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「別に貰えばいいじゃない。過ぎてから知ったほうがショックだと思うけど」
「・・・別にめでたい歳でもないしね。ていうか、わたしも早坂さんの誕生日知らないし」
「聞けばいいじゃない」
「そしたら、流れ的にわたしの誕生日は?ってなって、実はもうすぐですって・・・やらしくない?」
「はあ?恋人同士で知らないほうがよっぽどおかしいわ」
「恋人同士じゃない!」
「はいはい。まあ好きにしてくれ。誕生日プレゼントはアナタのキスで♡とか可愛く言ってみたら」
──あの時の事が蘇り、着替えていた手が止まった。マズイ、考えるな。
「ん?どしたの?」
「いやべちゅに?」
「・・・なんで赤面してるわけ?」
察しのいい女と顔にすぐ出る女の組み合わせほど最悪なモノはない。
「あれれれれ〜?これは何かあったなぁ〜〜?」
「うぅ・・・」
「脱いだ服また着てどーすんのよ。それで!?何があった!?」
「・・・なにがって・・・」
「んん!?もったいぶらずに言えっ!」
「・・・あっ、あとで言う!もう開店だから!」
「ふっふっふっ、楽しみが出来たわ」
只今23時ジャスト。
本日の居酒屋TATSUは、猫の手も借りたいほど大盛況であった。3日間の運動不足が祟り、わたしの足腰は盛大な悲鳴を上げている。
「衰えを感じる・・・ここ最近、リアルに」
「歳じゃない?」
「否定は出来ない!20も後半になると、こんなに身体に出るものなのか!?」
「まだ前半でしょ」
「まもなく迎える!ダメだな・・・明日から毎日ランニングしよ」
春香は最後の食器を洗い終えると、腰に手を当て、身体を後ろに反らした。
「あ"〜、腰いた。あのね、人間は20歳超えた時点で日々衰えてんのよ。だから今のうちからケアが大事なの、わかる?」
「うん。やっぱり、ランニングは毎日欠かさずやらねば」
「・・・ま、アンタは体力重視か。アンタのそーゆうところが良いんだろうねぇ、早坂さんは」
ギクっとして、皿を拭くスピードが加速した。
「早坂さんと言えば・・・」
更に加速する。
「あの会話の流れで、アンタの反応を考えると・・・キスしたの?」
勢い余って皿が手から離れ、宙を飛んだ。わたしはそれをすかさずキャッチした。
「おー、さすが野生的反応。それで?」
逃れる事は、不可能だ。額に汗が滲む。
「・・・した」
「前に首にされた事あったじゃない」
「今回は・・・ちがう」
「どこ?」
「・・・くち」
「どっちから?聞くまでもないけど一応」
「・・・向こうから」
「セックスは?」
「ぶぁっ・・・かぁっ!なんでそーなる!」
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