喋るコウモリ

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「なんか!イロイロ思い出すと身体が燃えそうになるからこの話はヤメでっ!」 「ふぅーん、まあいいけど」春香がニヤリと笑った。「よっぽど激しかったのね」 その一言で、わたしは皿を割った。 その後、店を出たわたしは、あっ・・・と言いかけ、慌てて口を塞いだ。 しかし手遅れだったようで、店長がすぐに反応した。 「ん?どしたの?」 わたしは頭をブンブンと横に振った。 「なんでもありません!思い出した事があって!」 「そーなんだ。じゃあ俺は飲みに行くけど、行く人〜」 わたしは"状況的"に行けなかったが、珍しく春香も声を挙げなかった。 「行きたいところですけど、あたし明日朝イチで歯医者だからやめときまーす」 「雪音ちゃんは?」 「あ、わたしも今日はパスで」 店長はあからさまに肩を落とした。 「なーんか、最近付き合ってくれないよね。寂しいなぁ・・・」 「次は必ず」 わたしが言うと、単純な店長はすぐ顔を綻ばせた。 「じゃあ今度ね〜、2人とも気をつけて帰ってね」 「はーい、店長も飲み過ぎに気をつけて!」 店長は締まりの無い敬礼をすると、夜の街へ消えて行った。 「なんか、すでに酔っ払ってるような足取りよね」 店長の後ろ姿を見ながら春香が言った。 「いつもでしょ。てか春香っ!」  春香の身体がビクッと跳ねた。 「・・・な、何よ」 「紹介する!」 「・・・何を?」 わたしは地面を見た。そこにいる、空舞さんを。 「空舞さん!春香です!わたしが見える事を伝えた友達!話の覚えてますか!?」 「それは覚えているけど、お友達は大丈夫?」 「えっ」 春香は口を開き、コイツ大丈夫か?というようにわたしを見ている。 「あっ、ゴメン!春香、この前言ったよね?空舞さんのこと!」 「アムさん・・・?ああ、喋る鳥のこと?」 「・・・あ、うん」 "喋る鳥" 他に説明のしようがないのは事実だが、言葉にされると、どうしても雑な感じに聞こえてしまう。 「何か気にしてるの?あなただって、最初言ってたじゃない。喋る鳥って」 「や、そうですど・・・」 「えっ、待って、いるってこと?・・・その鳥が、ここに?」 「あ、うん!そーなの!ここにいるの空舞さんが!」 地面を指さし、興奮しているのはわたしだけで──当たり前だが、春香は全く状況を理解していない様子だった。 「ゴメン、そんな事言われても、見えないもんね・・・」 その時、空舞さんが予想外の行動に出た。 地面から飛び立ち、春香の肩に着地したのだ。 春香はビクッと反応こそしたが、声は上げなかった。
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