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「それでアナタが勝手に死んだら?」
「うーん・・・でも、わたしは死にません。その前提で動いてるんで」
空舞さんは頭を垂れ、フーッと息を吐いた。
「脳天気って言ったのは撤回するわ」
「えっ」
「馬鹿ね」
「えええ!?」
「でも、強くなったわね。会ったばかりの頃とは比べ物にならないほど」
「・・・それは、みんなのおかげです。てか、こんな事言えるのも正直、こうやって空舞さんが近くにいてくれるからですよ?」
「・・・わたしはいつだってここにいるわ。あなたが望むなら」
「・・・空舞さん・・・ずっとそばに・・・ブファッ」
抱きつこうとしたわたしの顔に羽根が叩きつけられた。
「こっちに来るわ」
「えっ?」
「中に入りなさい」
「えっでも・・・」
「早く!」
すぐに、反応したつもりだった。
でも、それ以上に向こうが早かった。
わたしが部屋に向くより先に、そこに現れた。
「大丈夫。安心してください」
今のは、空舞さんが言ったんじゃないというのはわかった。
「すみません。気づかれないように行動していたつもりなのですが、バレていたのですね」
「・・・え」
わたしの視界に見えるのは、手すりの上の空舞さん。
そして、その隣に── 「コウモリ?」
1度ギュッと目を瞑り、再度確認した。やっぱり、幻覚じゃない。
「空舞さん・・・見えてますよね」
「アナタ、何者?」 空舞さんに、それほど警戒心は感じられなかった。
「わたしはテルと申します。雪音さん、あなたの周りを監視するようにと財前さんから言われております」
「えっ!財前さんが・・・?」
「はい。あなたに危険が差し迫った場合、ここら一帯にいる仲間にわたしが合図を送り、財前さんへ知らせることになっています」
「そうなんだ・・・」 仲間って、同じコウモリだろうか。
「危険が迫ってから知らせても、遅いんじゃない?」
空舞さんはどこか喧嘩腰だ。
「その時は、近くにいるわたしの仲間が一斉に集まります」
「それで何か出来るの?」
間違いなく喧嘩腰だ。
「そう言われると言葉に詰まりますが・・・わたしたちの発する特殊な音波で足止めは出来るかと。わたし1人では、あまり意味を成しませんが」
「音波?ですか?」
「ええ、わたしたちコウモリが特有とする音波です」
超音波ということだろうか。
「それ、今やれと言ったら出来る?」
「空舞さん!?何をっ!」
「かまいませんが・・・何故ですか?」
「どんなものか見てみたいの」
「・・・では、軽くやりますよ」
そう言うと、テルさんは目の上から生えた大きな耳をピクリと動かし、上を向いた。その小さな口が開くと、空舞さんがすぐに反応した。よろめき、手すりから落ちそうになる。
「空舞さん!」
しかし、すぐに体勢を持ち直した。
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