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「すみません、最小限に抑えたつもりですが。大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ」
「ビックリしたぁ・・・」
「安心したわ。群れになれば、かなり強力ね」
「・・・わたしには少ししか聞こえなかったな」
テルさんがわたしを見た。
「今のが、聞こえたんですか?」
「はい、少しだけですけど。キィーンって」
「驚いた。人間には聞こえるはずのない特殊な音波なのに」
「そーなんですか?」
「野性の部分が反応したのね」
──そんな、当たり前のように言われても。
「そうなると、少し困りましたね。群れでとなると、雪音さんにも影響があるかもしれない」
「あっ、大丈夫ですよ。その時は耳塞ぐので」
「・・・耳を塞いでも効果はないと思います」
「あ、そうですか・・・」
「そもそも、その状況になったらそれどころじゃないと思うけど、アナタは」
「・・・そうですよね」
──沈黙に包まれる、人間とカラスとコウモリ。
「わたしはこれで戻りますね。雪音さん、もし何かあった時は、迷わず叫んでください。そうならないようにわたしたちがいるのですが・・・万が一の時はそうしてください。数キロ範囲の声はわたしたちに届きますので」
「あ、はい。わかりました。ありがとうございます」
「ではこれで」
テルさんは体より大きな翼を広げ、音も立てず一瞬で暗闇に消えた。
「・・・驚きましたね。まさか、財前さんの"知り合い"だとは」
「そうね。でも、良かったわ。これで少しは安心できるもの」
「そうですね・・・心強いです」
「1番は、"元凶"を見つけることだけど・・・」
「何処にいるかもわからない相手を探すなんて、不可能ですよね」
「そうかしら?人間の姿をしていても、ソイツは妖怪よ。わたし達にはわかるわ」
「・・・もし、本当にわたしの身体を狙ってるんだとしたら、また現れる可能性は大ですよね。ある意味、好都合だな」
「どーゆう意味?」
「いや、元々わたし達はその大蛇を探してたじゃないですか。向こうから接近してくれるなら手間が省けますよね」
「怖くないの?」
「怖い・・・ですけど、財前さんの事を思うならそれはそれでいいかなって」
「ソイツを殺さないと、龍慈郎は死ぬのよね」
「・・・はい」そんな事、絶対させない。
「じゃあ行ってくるわ」
「・・・えっ!今からですか!?」
「黙っているよりいいでしょ。わたしも行動範囲を広げてみるわ。じゃあね」
「あっ、気をつけてくださいね!」
──その大蛇を、みんなが探している。
前に早坂さんが言っていた、各場所に偵察係がいると。
わたしは何もせずにいていいんだろうか。何か出来る事はないのか?
ふと、思った。わたしを狙っているなら、自分から出向けばいいのでは?──でも、何処に?ソイツが何処にいるかわからない以上、こちらからは動きようがない。
自ずとため息が出た。何も出来ない自分が、もどかしい。
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