喋るコウモリ

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人気の無い所まで行き、わたしは息を吸い込んだ。 「テルさーん!いますかー!」 空に向かって、大声──とまではいかないが、叫んだ。 時間にして、僅か10秒。テルさんは目の前に現れた。驚いて開いた口が塞がらなかった。 「どうしました?何かありましたか?」 テルさんは羽根を上下に動かし、わたしの顔の前でホバリングしている。 「今、何処から来ました?」 「近くにいましたよ。あなたをずっと追っていたので」 「そうなんですか・・・あっ、あの人がいたんです!わたしが会った女性・・・大蛇!」 テルさんの耳がピクッと動いた。 「何処で?」 わたしはスーパーを指さした。「レジに並んでたら後ろから話しかけられて、すぐに探したんですけど、何処にもいなくて・・・いや、すぐでもなかったかも」一瞬、身体が硬直して反応が遅れてしまった。 「怪我は?この前のように何処かに傷などはありませんか?」 「あっ・・・いえ、何もないです」 「何と言われたのですか?」 「・・・生き延びて良かった、この身体が羨ましいって」 テルさんが突然、上を向き口を開けた。次の瞬間、強烈な耳鳴りに襲われる。 「ッ・・・」 思わず耳を塞いだが、効果は無い。 脳内に響き、頭痛と吐き気がしてきた。 しかし、それはすぐに収まった。 「雪音さん、大丈夫ですか?」 「だいじょぶ・・・です。凄いですね」 「今のは3割ほどの力です」 「あ、そうですか」 「わたしに気づいていますね。だから、店の中で声をかけたのでしょう。すみません、油断していました・・・前に会った時と姿は変わっていませんでしたか?」 「あ、はい、若い女性の姿でした」 その時、暗闇の空をこちらに向かってくる物体が見えた。1つじゃない、小さな物体が固まって飛んでいる。それはわたしたちの真上に来ると、四方八方に広がった。 「・・・コウモリ?」 「わたしの仲間です。雪音さんはわたしと一緒に自宅へ戻りましょう」 「あ、はい」 家へ向かって歩き出すと、テルさんもわたしの上を飛びながら付いてきた。 「あの、さっきのって仲間を呼ぶためですか?」 「そうです。わたしの仲間には、その女を探してもらいます」 「・・・見つかるでしょうか」 「・・・わかりません。今までの事を考えても、奴は周到に動いている」 「さっきだって、わたしを殺そうと思えば出来たのに・・・まだその時期じゃないってこと?」 前に、財前さんが言ったことを覚えている。数ヶ月に1度脱皮をして、別の人間を食らいまた姿を変えると。 「おそらく。雪音さんの身体を狙っているとしたら、次の脱皮を待っているのでしょう」 「その時に、狙ってくると」 「はい」
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