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「大丈夫ですよ。前向きに考えましょう」
「・・・あなたって変なとこで前向きよね」
「えっ」
「お願いだから、無茶はしないで」
「・・・わたしって、そんなに危ないですかね?」
「え?」
「いや、テルさんにも言われたんですけど、そんなに無茶するように見えるのかな」
「・・・ずいぶん仲良くなってるじゃない」
──おっと、これは不機嫌トーンだ。なんで?相手はコウモリなのに?男だから?
「心強いですよ。すぐそばで見ていてくれてるので」
「部屋に入れたの?」
「部屋?いや、ベランダまでですけど・・・」
「ふぅん・・・とにかく、用心しなさいよ。また連絡するわ」
「わかりました」
通話を終え、わたしは首を傾げた。
今のは、ヤキモチ?なぜ?相手はコウモリなのに?
早坂 遊里。いまだによくわからない男だ。
それから2日後、その意味がわかった。
仕事を終えて店を出たわたしは、あるモノを見てしまった。ネオン街を歩く人混みの中に紛れている、妙な物体を。
なんだ、アレは──いや、何処からどう見ても──「骨?」
「ん?何見てんの?」
「あ、いや、ちょっとね」
「・・・まさかっ・・・」
「あ、うん。そのまさかだと思う」
「ギャーッ!」春香はこの前と同じようにピョンピョンと飛び跳ね、わたしの背中にしがみついた。「なにっ!今度は何なわけ!?」
「骨?」
「は!?」
「いや、人骨が歩いてるんだよね、あそこ。コスプレじゃないよね」
わたしが指をさすと、春香はわたしの背中から恐る恐る覗いた。
「そんなん見えないわよ!」
「だよね、やっぱそうか」
「なになに、どーしたの?」戸締まりを終えた店長がやってきた。
「骨が歩いてるんですって!店長!早く帰りましょう!」
「・・・なんの話し?」
「先に帰ってください。わたしはちょっと、寄り道して帰ります」
「えっ!?もしかして見に行くの!?」
「うん」
「大丈夫なの!?」
「大丈夫、早坂さんに連絡するから。心配しないで」
「おーい、話が見えないんだけど・・・」
「気をつけなさいよ!何がなんだかよくわかんないけど!」
「うん、じゃあまた明日。店長もお疲れ様でした」
「あれ?説明なし?」
すぐに早坂さんに電話をかけ、"骨"を追った。
「もしもし」
「はやっ!」毎度の事だが、何故こんなに早く出れる。
「どうしたの?」
「人骨が歩いてます」
「・・・はい?」
「そのまんまです。人骨が人に紛れて歩いてます。初めて見るんですけど」
「コスプレじゃないわよね」
「・・・被り物ではないです」
「あたしも初めて聞くわ。今どこ?」
「店を出て、追ってるところです」
「深追いは駄目よ。あたしも今自分の店にいるから向かうわ。電話はこのままで」
近くまで行くと、ハッキリと見えた。人骨そのものだ。理科室の骨格模型がキョロキョロしながら繁華街を歩いている。
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