喋るコウモリ

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「それで、助けてくれっていうのは何ですか?」 人骨はその場でまた体育座りをした。ちょっと、可愛いと思ってしまう自分がいる。 「オレの兄ちゃんが・・・消えちまったんだ」 「兄ちゃん?」 「昨日から家に帰ってこねぇんだ。何処に行っちまったんだか・・・」 「・・・家って、あるんですか?」 「ああ、この近くだ。アンタ、オレが見えるなら一緒に探してくれねぇか?頼む!」 「その前に答えろ」言ったのは、テルさんだ。「これまで、人間を傷つけたことはあるか?」 「・・・傷つけた?」人骨は口を開け、ポカーンとしている。 「そのままの意味だ。人間を襲った事はあるか?」 「ねっ、ねぇよ!オレも兄ちゃんもそんなことしねぇ!」 テルさんは早坂さんを見た。「どうします?」 「どうって?」 「始末しますか?」 人骨がビクッとして身構えた。「始末ってなんだよ!やめてくれよぉ!」 「・・・襲われる事はあっても、誰かを襲うようには見えないけどね」 「あの、とりあえず話を聞いてからにしませんか?困ってるみたいだし」 「アンタは・・・優しいなぁ」人骨はわたしに手を伸ばしかけたが、早坂さんを見てすぐ引っ込めた。 「コイツの頼みを聞くということですか?」 「まあ、話を聞くだけでも・・・」 「わかりました」テルさんが溜め息混じりに言った。納得してないのは明確だ。 「あの、名前はありますか?」 「オレか?オレは千代松(ちよまつ)だ。アンタの名前は?」 「わたしは雪音です。この人は早坂さん、テルさん」 「雪音・・・か。良い名前だなぁ、べっぴんだしよぉ」千代松さんはまた早坂さんを見て縮まった。 「その家って、何処にあるんですか?」 「この近くだ」 「連れてってもらえます?」 「ああ、ついてきてくれ」 千代松さんは立ち上がると、2人の前をビクビクしながら通り表へ向かった。 明るい通りに出て、わかった。 テルさんはやはり、グッドルッキングガイだ。切れ長な目に長いまつ毛、スッと通った鼻筋。白いワイシャツと黒のスラックスのシンプルな装いがスタイルの良さを引き立たせている。 黒かと思った髪の毛はよく見ると青みがかっていて、何とも不思議な色だ。 それに、あの耳。髪に隠れているが風が吹いた時に一瞬見えた。尖っている。"コウモリ"のように。 「なんですか・・・」 わたしの視界が、テルさんの背中から早坂さんの顔に変わった。 「何見つめてるの」 「見つめてません。前向いて歩いてください、転びますよ」 千代松さんの案内のもと、テルさん、少し離れてわたしと早坂さんが続いている。その家とやらは近い所にあるらしいが、いったい何処に連れて行かれるのやら。 「ずっと見てたじゃない」 「・・・なんか、驚くことばっかだなって」 「テルのこと?」 「も、そうですけど。千代松さんも」 「千代松さん、ね。面白いわ、なんであんなに猫背なのかしら」
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