喋るコウモリ

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「お前ら、どうしたんだ?」 一方、千代松さんは何も感じていないようだ。鼓膜が無いからか? すると突然、早坂さんがわたしの腕を掴み自分に引き寄せた。 すぐに後ろを振り返ると、空から落下してくる大きな鳥が見えた。 「ギャ──ッ!」ハモったのは、千代松さんの声だ。 ドスンッと鈍い衝突音と共に風が押し寄せた。 しばらく、その場から動けなかった。 「・・・鷲?」 「巨大な鷲ね」 巨大なんてもんじゃない、仰向けに翼を広げ、ピクピクと痙攣している鷲の全長は5メートルはあるだろう。見開いた目は赤く、巨大なクチバシから泡が噴き出ている。 「ぎゃああああああ」 今のは、わたしでも千代松さんでもない。 声のするほうを向くと、空から何かが降ってくるのが見えた。それは巨大な鷲の腹に落下した。 「兄ちゃん!」 まったく同じ見た目の、人骨だ。 「いててて・・・ッ・・・ぎゃああああ!!」自分の状況に気づいたお兄さんは鷲から飛び退き、四つん這いで逃げた。 「兄ちゃん!無事でよかった!」 「千、千代松〜〜!」 千代松さんはお兄さんの元へ駆け寄り、熱い抱擁を交わした。こうして2人は感動の再会を果たしたのだった。 骸骨同士のハグは、なかなか拝めるものではない。 「遊里さん、今のうちにお願いします」 気づけば、テルさんがそこに居た。 「ああ、そうね。茶番劇に気を取られてる場合じゃなかったわ」 茶番劇って、2人の事か。酷い言い様だ。 「その短刀では心臓まで届かないでしょう。頭を狙ってください」 「あいよ」 早坂さんは鷲の頭へ回り込み、その短刀を躊躇なく頭へ突き刺した。鷲の翼が1度、大きく動いた。それからは微動だにせず、頭から徐々に白く染まり、最後は塵と化して消えていった。 「図体の割に、あっけなかったわね」 「・・・気絶してたのって、テルさんがやったんですよね」 「ええ、わたしの音波は飛翔生物には効果覿面なんです。特に、ああいった鳥類には」 「なるほど・・・凄いですね」 「雪音さん、後ろを向いてもらえますか」 「後ろ?」 「人間の姿になるので」 わたしは首を傾げた。何のことだ? 「服がそこにあるでしょ」戻ってきた早坂さんが、わたしの肩を掴み後ろを向かせた。そのままわたしの身体越しに短刀を鞘に納める。 「あ、そっか。服がそこにあるってことは、人間に戻ったら・・・」その先は、あえて言わなかった。 「さっ、帰りましょ。疲れたわ」 「遊里さん、雪音さんをお願い出来ますか。わたしはコイツらに話があるので」 「はなからそのつもりよ」 「あのっ」振り返り、思わず目を逸らした。まだ、シャツのボタンをとめていなかった。「話っていうのは・・・」 「安心してください、何もしません。ただ1つ伝えておきたい事があるだけです」 「・・・わかりました。じゃあ、千代松さん・・・とお兄さん、これからは気をつけて!」
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