喋るコウモリ

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降りようと脚に力を入れたが、ガッチリと押さえられ動かせない。 「あの、降りるんで」 早坂さんは半分振り返り、ニヤリと笑った。 「おしおきが必要ね」 「だ──っ!ごめんなさい!」 「許さないわ」 早坂さんは背中にいるわたしを力ずくで前へと移動させた。 なんだ?今のどうやった?わたしは、あっという間に抱っこされていた。そして、早坂さんの唇が首に押しつけられた。身体がビクッと反応する。それで終わると思いきや、早坂さんはププププッと息を吹きかけた。まるで赤ちゃんのお腹にするように。くすぐったくて身体が捩れた。 「アハハハハ、ちょっ、無理!勘弁ー!」 早坂さんの唇がわたしの首を這い、下がっていく。早坂さんはわたしを抱いたまま、片手でスウェットの襟を下げた。鎖骨が露わになり、その中間に唇が押しつけられた。強く吸われ、身体がまたビクッと反応する。 「あのっ、早坂さん・・・」 唇を離した早坂さんは、最後にそこをペロッと舐めた。この前、わたしの唇を舐めたように。 何かと限界を迎えようとしていたわたしは、そのまま力なく早坂さんの首にしがみついた。 「ごめん。タガが外れた・・・」 そう呟き、早坂さんはギュッとわたしを抱きしめた。 死にそう。そして、顔を上げたわたしは本当に死んだ。 「なんだ、お前らアベックだったのか」 チーンというおりんの音が聞こえた。千代松さんとお兄さんが階段を下りてきたのも気づかなかった。早坂さんの肩にダランと垂れる。 「ちょっと、雪音ちゃん?大丈夫?」 お願いだから、このまま意識をなくしてください神様。 唯一救いだったのは、テルさんがいなかったことだ。 その日、家に帰ったわたしが鏡にうつる自分の鎖骨を見て発狂しかけたのは、言うまでもない。
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