虎視眈々

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「君は本当に面白い。好きになってしまいそうだよ。そうだね、今はその時期ではない。そして此処では無理だ。だから、"別の場所"でお願いしたいんだ」 「わたしが受け入れたとして、周りの人に何もしないという保証は?」 「ふむ・・・それは難しいね。口頭での約束以外、術が無いよ。しかし、君も知っての通り、私が欲しいのは君の身体だ。それを手に入れた後で、君の友人に手を出しても私には何のメリットもない」 淡々と言う彼女の表情からはそれが本当かどうか読み取れない。 「1つ、聞きたい事が」 彼女はニコリと笑った。「何でも聞くといい」 「・・・財前さんを、助ける事は可能ですか?」 彼女は脚を組み替え、膝の上で手を組み、興味深そうにわたしを見た。 「その方法は、君も知っているんじゃないのかい?」 「あなたを殺す事ですよね。それ以外に、助ける方法はありますか?」 「残念ながら、ないんだ。今君が言った方法以外にはね」 「それは本当ですか?」 「あるなら、もうとっくに試しているはずだよ。龍慈郎には優秀な人間がついているからね。君もそのおかげで助かっただろう?」 ──雪人さんのことか。この人は、本当に全てをわかっているのかもしれない。 「私を、殺したいと思うかい?」 「はい」 彼女はククッと笑った。「正直でいいね。やってみるかい?」 ポケットに忍ばせたナイフに意識が集中する。わたしが今、彼女を殺せる可能性はどれくらいだろう。0.1パーセントでもあるなら、やってみる価値はあるが、その段階はすでに超えている。 「いえ、失敗して、逆上したあなたが誰かを傷つけないとも限らないのでやめときます」 「おやおや、ずいぶんと物騒な事を言うね。雪音ちゃん、君は私を"買い被りすぎ"のようだから一応言っておくが・・・私はね、君の身体にしか興味がないんだよ。他の事は眼中にないんだ。だから約束しよう」一拍置いて、彼女は不敵な笑みを浮かべた。「君が言う事を聞いてくれるなら、他の誰にも一切手を出さないと。信じてくれるかい?」 「いえ」 彼女はやれやれと頭を振り、悲しそうに溜め息を吐いた。 「もう少し、人を信用したらどうだい?」 「あなたの何処に信じられる要素があると?実際、わたしの友達を傷つけてる」 「ああ、"春香ちゃん"ね」彼女はコロッと表情を変えた。「あんなの傷つけたうちに入らないだろう?人間、生きていれば擦り傷の1つや2つ日常茶飯事だ」 「・・・なんで、わたしなんですか?他にもっと"優れた身体"がいるのでは?」 彼女は顎に手を置き、考える素ぶりをした。「そうだね・・・強靭な肉体を持つ者はたくさんいる。"1つ前"もそうだったよ。筋肉質で男らしく、屈強な身体だった。しかし身軽さという意味では・・・ちょっとね」
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