始まり

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後から来た"オネエ"じゃない男のほうが、わたしをジッと見る。—— えっ、睨まれてる? 「お前は・・・」と男が言いかけたところで、オネエが遮った。「ちょっと、そんな威圧的に見たら怖がるでしょ!ただでさえ悪人面なんだから。ねえ?」 わたしに同意を求められたが、反応出来るわけもなく。 「やかましい!別に、普通に見てただろうが」 「ゴメンねぇ、この人顔はこんなだけど、決して怖い人じゃないから」その、この人の肩をオネエがポンポンと叩く。 確かに、威圧感は否めない。切れ長の目と太い眉毛がそう見せているのかも。そして、この人も、デカい。 「あの・・・」自分でも聞こえるか聞こえないかという声だったが、2人が同時にわたしを見た。「この状況が、よくわかっていないのですが・・・」 わたしは無意識に、彼女を探した。さっきまでわたしに触れそうな程近くにいた彼女は、いったい何処へ? 「あの女の人なら始末したわよ。まあ、人とは言えないけど」淡々と言われ、頭がついていかない。 「ということは——」男が言い、オネエが頷いた。 「見えるわね」わたしに問いかけるというより、納得している口ぶりだ。 今、わたしに唯一理解できることは ——「もしかして、見えるんですか?」 2人がまた同時にわたしを見る。そして2人で目を合わせた。 「見えるんですかって、見えなきゃ始末出来ないだろう」当たり前のように言われ、ちょっと怯む。 「始末って、あなたが・・・?どうやって・・・」 オネエを見て言ったが、またもや返ってきたのは、「どうやってって、その場に居たんじゃないのか?」 「はいストーップ!だから威圧的になるのやめなさいって!怯えてるじゃないの」 わたしは口を閉ざした。確かに、威圧的だもの。 「別に、そんなつもりはない」男は少し申し訳なさそうに言った。「この口調は元からで、他意はない」 「目閉じてたから、見えなかったのよね?」オネエに優しく言われ、わたしは頷いた。 この人、変だけど(かなり)、優しい。 「にしても」そう言うなり、オネエが身体を揺らし始めた。「面白かったわね。奴ら相手に、落ち着きましょう!話し合いましょう!なんて、初めて聞いたわ」 体の揺れは、笑っているからだ。そんな事を言われても、イマイチ自分でも何を言ったか覚えていない。
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