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慈善活動で死んでくれ
死にたくなった来た。
ひどく消えたくなってきた。
自分がどうしようもなくみじめで生きづらい生き物のように思えてならない気がしてくると私は決まって貴女を思いだす。
貴女も、まるで路端で転がるビニール袋みたいに踏まれ薄汚れた感情を、さも当たり前のように見て見ぬふりして生きているのでしょう。
ついに我慢できなくなった貴方は私に聞いたのです。
「死後の世界はあるのかしら」と
私はなくても平気で、むしろありがたいと感謝している人間だったのですが、貴女はそうではなかったのでしょうね。
「しんじてんの?」
浅はかに笑えば、貴女は難しいそうに唸り首を傾けて考える素振りをみせ、
「……半分?」
同じように吹き出したようににこやかに笑うのです。その顔がなんとも哀しそうで、ふいに目元が疲れて見えたのです。
「……半分とは?」
私が尋ねれば、うまく言えないけど……と貴女は話してくれました。
「半分というか、死後の世界なんてないって思ってはいるんだ。幽霊がいるかいないかみたいなものだろ。……でもさ、半分くらい、希望で信じてたらさ……、もう半分ですべてをひっくり返すような出来事や相手に出会えるかもしれないだろ」
昔から、貴方は破天荒な人に憧れていたのはそのせいでしょうか。
誰かに、どうしようもないヒーローに、めちゃくちゃにされて救われたかったのでしょう。
――結局、そんなヒーローが現れることなどなく。
貴女は……
死を誰よりも恐れ、畏怖し、
それでいて生きることに疲れて泥濘で笑っていた貴女は
痛みに過剰に悲しむ貴女は
どうしようもないその頭で考えた貴女は
永い眠りを選んだのでしょう。
つい先日、テレビで誰かが言っていました。慈善家でしたか、大御所でしたか、なんだっけか、
私たちよりも人間で、悩み、苦しんだ方が言ってました。
「悲劇に酔っているだけだ」と
その言葉に私は酷く恥ずかしくなって頬が熱くなりました。
事実だからです。勝手に拗ねてるだけなのです。拗らせてるだけなのです。
その夜、貴女の言葉を思い出しました。
何が悪いというわけでなく、誰が悪いというわけでもない、しいて言えば生きづらい私が悪いのですと。
酔わせてくれよと怒りが沸いてきました。
ちょっとしたことで傷がつく、
良かれと思ったことがからまわり、
何もしない方が皆さんの助けになっている
みじめ
嗚呼、みじめ
それを誰かに強制したことなんてないのだから
酔わせてくれよとふつふつと恥辱が不満に、憎しみに変わっていきました。
その慈善活動とやらで酔わせてくれよ。
酔わずには生きていられないと、果物ナイフを持って深夜の町へ繰り出しました。
私は死ぬは怖くないです。そこが貴女と違うから遅くなってしまいました。
本当に遅くなってごめん。
コンビニでいつもたむろしている不良グループがおりました。
小太りと、ロン毛のひょろがりと、あと小柄な少年たちでした。
今、助けにいきます。
「慈善活動で死んでくれ!!」
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