Ordinary days.

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 この家の玄関ポーチはテラコッタが敷かれていて、冬だが素焼きタイルの温かさが素足の裏に伝わってくるのを感じつつ玄関を出て右手の隣家との境の役目にもなっている板塀に設えてあるポストを開ける。 「おはよう。今日は冷えるね」  差し込まれている新聞を取り出したポストのドアを閉めたとき、板塀の向こう側から男が眠そうに挨拶をしてきて、その声にリアムもおはようと気軽に返す。 「それだけ鍛えていたら寒くない?」 「人より寒さは感じないかも」  でも寒いものは寒いと笑って隣家の住人であるエディと話していると、自宅前の舗道を黒い中型犬を連れた青年が通り過ぎようとするが、二人に気付いたのかこちらも眠そうな顔でリアムとエディにおはようと手を上げる。 「おはよう、ダニー。シバも元気か?」  黒い中型犬――最近こちらでも見かけるようになった日本原産の柴犬という犬種らしい――のシバにも笑いかけたリアムは、ダニーと呼んだ青年が小走りに駆け寄ってきた事に気付き、新聞を小脇に抱えてしゃがみこむ。
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