A Man Called Liam. - リアムという男 -

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 松葉杖を使っていると大好きなパパやママ、そしてきみが元気になるのを待ってくれている友人達とハグすることも難しいと続け、見るものを安心させるような笑みを浮かべてどうだろうかとジェイミーに提案する。 「今ここで杖を手放してみないか?」  両手に杖を持っていると他に何も持てなくなる、幸いきみはリハビリで杖が無くても歩けるのだから不要なものを手放す一歩を踏み出してみないかと誘うようにジェイミーに大きな掌を向けると、激しく逡巡するようにジェイミーの視線が左右に揺れるが、意を決したように手が杖から離れリアムが手で受け止める。  「ジェイミー!」  不安と恐怖からどうしても杖を手放せなかった息子が自らそれを手放すだけではなく、蹌踉けながらも自分達に向けて足を踏み出した様子に感激から声を詰まらせる両親に向けてジェイミーが一歩、また一歩と歩き、両親の間に飛び込んで両手を精一杯広げると、息子のまだまだ小さな身体を両親が抱きしめる。 「……良かったなぁ、ジェイミー」  パパとママを同時にハグ出来て良かったなと杖を軽く持ち上げるとジェイミーの顔にやり遂げた自慢が浮かび、両親がリアムに向けて深々と頭を下げる。 「ありがとうございました、ドクター」 「……もうこれでジェイミーは大丈夫だろう」  ジェイミーもこれで友人達と走り回ることが出来ると笑って少年に再度握手を求めたリアムは、それに応えてくれる小さな勇者の手をしっかりと握り返し、ああ、忘れ物だと笑って杖を差し出す。
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