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「ファーストペンギンになった気分はどうだ?」
「……まあまあかな」
「そうかぁ」
照れたように笑うジェイミーだったがその顔に隠しきれない自慢が浮かんでいるのをしっかりと見抜いたリアムは、彼に不要となったがある意味記念のものだと杖を渡して立ち上がろうとするが、そんな満足そうな広い背中に呆れたような声が投げかけられ、そこにいた皆が声の主へと顔を向ける。
「……廊下の真ん中に座り込んで何をしているんだ、人畜無害のマッチョマン」
「ケイさん!」
その声にジェイミーとその両親がまた新しい見知らぬ誰かが現れたと、事情を全て理解していそうなアナの顔を見つめ、彼女が微苦笑しつつ脳神経外科のドクター・ユズーフーバーだと紹介されてその名前に気付いてリアムの顔を見下ろす。
「ジェイミーがファーストペンギンになったのを見届けていた」
「は?」
リアムが満面の笑みで答える言葉の意味が理解出来ずに眼鏡の下の目を丸くしたのは、小児科医の友人、バロウズの元を訪れていた慶一朗で、己の伴侶が廊下の真ん中に座り込んでいる背中を発見し、何をしているのかとバロウズと顔を見合わせていたのだ。
「もう杖が無くても歩けるけれど、ほんの少しの勇気が出なくて躊躇ってたジェイミーの背中を押してくれたのよ」
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