A Man Called Liam. - リアムという男 -

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 慶一朗の戸惑いが手に取るように理解出来たアナが慶一朗とバロウズに事情を説明すると、ジェイミーの入院中の様子を知っているバロウズの目が慶一朗とは違う理由から見開かれ、次いで感心したように細められる。 「で、そのファーストペンギンのジェイミーが海に飛び込んだのを見届けたんだろう?」 「うん」 「じゃあど真ん中に座ってないで立つか端に寄ればどうだ?」  お前は人一倍体格が良い、車椅子で通る他の患者の迷惑になるぞと少し厳しい声で慶一朗がリアムに注意をすると、その言葉に状況を思い出した顔でリアムが飛び上がり、確かにそうだと頭に手を当てる。 「まったく」  お前の優しさは理解出来るし褒めるべきだが周囲の状況を少しだけ見ろと苦笑しつつリアムの分厚い胸板に右の拳をトンとぶつける慶一朗にリアムが眉尻を下げるが、情けない顔をするな王子様と囁かれてじわじわと口の端を持ち上げる。 「ジェイミー、もうきみは杖が無くても大丈夫だな?」  二人のやり取りを微笑ましい気持ちながら顔にはそれを出さずに見守っていたバロウズが少年とその両親の前に向かうと、三人が見知ったドクターが現れたことに顔を綻ばせ、もう大丈夫とジェイミーの力強い返事を受けてバロウズの顔に笑みが浮かぶ。 「じゃあ気を付けて」  軽く頭を下げる三人を見送った三人のドクターと看護師だったが、患者の姿が見えなくなると同時に仲間内の気軽さからバロウズがリアムの腹に拳を押しつけ、久し振りだね空気清浄機と笑いかける。
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