A Man Called Liam. - リアムという男 -

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 人畜無害のマッチョマンだの空気清浄機だのと己を好き勝手に呼ぶ伴侶や友人に肩を竦めたリアムだったが、慶一朗の耳元に口を寄せて何かを囁いた後、分かっている事を教えるような目に見つめられて安堵の息を零す。 「ミシェル、さっきの患者の件について詳細を後で俺のメールに送っておいてくれ」 「分かった」  リアムの囁きに頷いた後にバロウズに向き直った慶一朗だったが、事情を話さなくても理解出来る為にその言葉を告げて友人の頷きを貰うとリアムを手招きして歩き出す。 「アナ、ミシェル、またな」 「ええ」  二人に手を挙げて歩き出した慶一朗を追いかけて行くリアムだったが、あっという間にその隣に並び何やら話し掛けては頷く背中をバロウズとアナが見送る。 「……人にやる気を出させるのがまた一段と上手くなったんじゃないか?」 「……そんな気がしますね」  リアムと短期間とはいえ同僚だったバロウズとアナが顔を見合わせ、リアムが自分達と一緒に働いていた頃に比べまた一回り大きくなった気がすると図らずも同じ思いを口にしてしまい、早く出向先から戻ってこないかなと、今自分達の同僚である他の小児科医に対する思いを滲ませた言葉を呟くバロウズにアナが無言で同意をし、それぞれの持ち場に戻るためにナースステーションや自身の診察室に向かって歩き出すのだった。  
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